不妊の検査・治療を受ける夫婦が増えている

妊娠を希望する健康な男女が避妊せずに性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないことを不妊といいます。不妊は身近な悩みであり、厚生労働省によると不妊治療を受けている夫婦は約4.4組に1組と増加傾向です。一定期間の目安は一般的に「1年間」と定義されていますが、医学的介入が必要な場合や妊娠しにくい条件がある場合などは、1年を待たずに不妊の検査・治療を始めることが推奨されます。

出典：「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」（厚生労働省）

自然妊娠に近い人工授精

不妊治療は、妊娠を望む夫婦やパートナーに施す医療行為です。その中で人工授精は、自然妊娠に近い形の治療方法となります。AIH（Artificial Insemination of Husband）とも呼ばれる人工授精は、排卵のタイミングに合わせて精液を子宮内へ直接注入します。人の手が介するのは精子を子宮に送り届けるまでで、その後は精子自ら泳いで卵管の卵と受精するなど、自然妊娠と同じメカニズムが特徴です。

出血や感染症などのリスクがあるため、十分な安全管理のもと検査・治療を実施する医療機関へ相談することをおすすめします。

どのようなケースで人工授精が選ばれるのか？

人工授精は以下のようなケースで選択されることが多いです。

• タイミング療法がうまくいかない場合
• 精液の質や量は基準値だが、自然妊娠に至らない場合
• 不明確な原因による不妊症の場合
• 不妊症と診断されてからの期間が短い場合
• 性交障害がある場合

人工授精は身体への負担が比較的少ないものの、妊娠率が飛躍的に上がったり、すべてのケースに適応したりするわけではありません。状況に応じて体外受精などの治療方法を視野に入れることもあります。適切な治療を選択するためにも、医師とじっくり話し合い決めていくことが重要です。

人工授精のメリットとリスクは？

先述したように、人工授精の大きなメリットは自然妊娠に近い方法であることです。また、身体への負担が比較的少なく、リスクを抑えつつ妊娠を望める点もメリットといえるでしょう。その一方で、いくつかのリスクも存在します。

例えば、人工授精の妊娠率は1回あたり約5～10％と、タイミング療法に比べてやや高いですが、必ず結果が出るわけではありません。治療の目安は最大でも6～7回とされ、この回数を経ても妊娠に至らない場合、別の方法に移ることになります。
人工授精は何度も挑戦する覚悟が必要です。自分自身の体調やライフスタイル、医師の意見などを参考にしながら、治療を検討することをおすすめします。

人工授精以外の治療方法

人工授精以外にも不妊治療の方法として、タイミング療法や体外受精などが挙げられます。

まず、タイミング療法は人工授精と同じ一般不妊治療であり、不妊治療のファーストステップです。排卵日を予測し、その時期に性交渉を行って自然妊娠を目指します。投薬によるコントロールで排卵を促すこともあります。男女ともに不妊の原因がない場合に適応する治療方法です。タイミング療法での妊娠が難しい場合、人工授精にステップアップします。

人工授精などの次なるステップとして体外受精があります。卵巣から取り出した卵子と精子を体外で受精させ、培養した受精卵を子宮内に戻して着床を促す方法です。年齢を重ねた方やなるべく早く妊娠を望む方に向いています。また、卵管の閉塞などが原因の不妊に対しても有効な治療となります。

他にもPRP療法などが存在します。PRP療法は、高齢や卵巣機能の低下による卵子の質の問題改善に向けた新しい治療方法です。血液から抽出した血小板を子宮内または卵巣内に注入し、卵巣機能の活性化を図ります。

ただし、これらの治療方法にもそれぞれメリットやデメリットがあります。例えば、タイミング療法は自然な妊娠方法ながら、成功率は必ずしも高くありません。体外受精は成功率が比較的高いものの、治療の費用や身体への負担が大きいです。